| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-070 (Poster presentation)
本研究で対象とするシデコブシとタムシバの交雑帯では種間雑種の存在が確認されているが、シデコブシを母樹とする種間雑種の成木や稚樹、実生はほとんど存在しないということが分かっている。しかし、この交雑帯において、実際にどのような交配が生じて種子が形成されているのか明らかではない。そこで、本研究では、これら2種の交雑帯において形成された種子の父性解析を行うことによって、どのような交配がどの程度生じて種子が形成されているのか明らかにすることを目的とした。シデコブシとタムシバが同所的に分布している愛知県瀬戸市西山路町の調査地において、2012年に成木335個体についてマイクロサテライトを用いた遺伝解析を行い、遺伝子型クラス(シデコブシ、タムシバ、F1雑種、F2雑種、シデコブシまたはタムシバとの戻し交配個体)を判別した。その後、2013年8月中旬に各遺伝子型クラスの成木から種子583個を採取し、種子と成木の遺伝子型を用いて父性解析を行った。種子の父性解析の結果、純系種個体の他に、タムシバを母樹とするF1雑種だけでなくシデコブシを母樹とするF1雑種、F2雑種、両種への戻し交配個体も形成されており、雑種が形成されて遺伝子浸透が生じていることが確認された。しかし、シデコブシとタムシバが母樹の場合は、種内交配によって形成された種子が約8~9割を占めており、F1雑種の種子はあまり生じていないということが分かった。これらの種子の割合は集団内でランダムに交配すると仮定した場合と有意に異なっており、種間に生殖隔離が存在することが示唆された。