| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-076 (Poster presentation)
ミズユキノシタ(Ludwigia ovalis Miq.)はアカバナ科チョウジタデ属の多年生水生植物である。
チョウジタデ属植物はミズキンバイのように花弁が目立つ花をつける種が多いが、ミズユキノシタは花弁を欠き、目立たない花をつける。そこで、その受粉と交配様式について、近縁で退化した花弁を有するアメリカミズユキノシタとともに調査した。
兵庫県三田市産のミズユキノシタを、神戸大学理学部圃場で栽培し、花の形態と開花生態について観察した。また、袋掛け実験と訪花昆虫調査を行った。
開花したミズユキノシタの花は中央に1本の雌蕊、周囲に4本の雄蕊がそれぞれ離れた状態で存在していたが、やがて花糸が萎れて雄蕊が中央に向かって倒れていくことにより葯が柱頭に接触し自家受粉を行っている様子が観察された。同様の様子はアメリカミズユキノシタでも観察された。袋掛けを行った開放花の平均結実率は73.0%、袋掛けを施さなかった果実(コントロール)の平均結実率は76.8%であり、両者の間で有意差はなかった(T検定・0.05<p)。以上の結果から、ミズユキノシタの花は自動自家受粉を行っていることが明らかになった。
ミズユキノシタの開花中に、アリがしばしば開放花を訪れることが観察され、アリが花粉の運搬をしている可能性も考えられた。開放花の雌蕊の基部の周りには蜜と思われる液滴がみられ電子顕微鏡で観察した結果、蜜腺と思われる小孔が確認された。アリは蜜を目的に訪花していると考えられる。
ミズユキノシタは自動自家受粉を行う一方で、アリによる他家受粉を行っている可能性がある。アメリカミズユキノシタでも同様の機構が見られることから、これらの種においては、花弁の退化、消失と自動自家受粉という進化が起こったと考察した。