| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-079 (Poster presentation)
クローナル植物集団では、単一の種子に由来するラメット(株)の集合であるジェネットが空間的に広がる。ジェネットのラメット生産様式は、1ラメットが生産するラメット数とラメットサイズ、およびラメットを配置する距離の3要素により特徴づけられ、これらの間にはトレードオフ関係があることが予想される。クローナル植物集団では、少数の優占ジェネットと多数の非優占ジェネットにより構成されている例が多く報告されているが、ジェネットサイズ(ジェネット内のラメット数と占有面積)は、確率的に決まるか、ジェネットの齢や微環境などで決まると考えられてきた。本研究では、優占ジェネットが特徴的なラメット生産様式を持つことが、優占ジェネットになっている原因かどうかを検討した。疑似一年生クローナル植物であるコンロンソウ集団(北海道陸別町)において、遺伝マーカーによるジェネットの識別を行い、優占ジェネットと非優占ジェネットの間でラメットサイズが異なるかどうかを調べた。さらに2つの優占ジェネットを非優占である別の10ジェネットとともに共通圃場に移植し、ラメット生産数と距離も含めたラメット生産様式を調べた。2つの優占ジェネットは非優占ジェネットに比べて、ラメット配置距離が有意に長いものと短いものであった。これらの結果にもとづき、優占ジェネットにおける、ラメットを遠くに配置し分布を広げる戦略と、近くに配置して今いる場所を占有し続ける戦略について議論した。