| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-126 (Poster presentation)
佐渡島大佐渡地域で長期にわたり維持されてきた半自然草地は、林間放牧の縮小とともに減少してきた。この半自然草地はもともと自然草原から拡大したといわれており、現在はその一部が森林へと戻っている。一方で、林間放牧は牛の採食行動により不嗜好性木本植物のパッチを成立させる。これらは半自然草地の縮小の際には森林化の要因となっていることが考えられる。本研究においては半自然草地の森林化にともなう種組成の変化および不嗜好性木本植物の分布動態を明らかにする。調査地には、放牧区2地点、放牧中止区1地点と未放牧区1地点を設定した.空中写真解析によりGISを使用して1976年と2006年の空中写真から草地面積と地形状況を比較した。さらに3×3mのコドラートを各区の草地および放牧区①と放牧中止区の森林化した部分にそれぞれ設置し植生調査を行った。空中写真の解析によると、草地の面積は30年間で大幅な減少を示した。調査地の比較から、この減少には牛の放牧圧の違いが大きく影響していた。さらに、各調査地において尾根を境に北西部分の森林化が遅く、季節風の影響によって形成されていた本来の自然草原の存在が示唆された。また、TWINSPANの結果から半自然草地が森林化した部分と現在の草地部分の種組成の違いが明らかになり、草地部分は放牧履歴の有無と地形状況によって種組成に変化が見られた。不嗜好性植物は放牧が縮小すると分布範囲を縮小させた。これらは、放牧区で林縁と草地内部のパッチ周辺、放牧中止区で林縁に分布していた。パッチ内部には高木性樹種が多くみられた。この違いは地形と森林化における他種との生存競争の結果と考えられた。