| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-127 (Poster presentation)
シカによる摂食が、林内の樹木の成長や生存に大きく影響し、特定の種の個体数を減少させることが報告されている。長期的に考えると、摂食を受けやすい種は、林内から絶滅してしまう可能性がある。そのため、長期的な森林管理や種の保全を行う上で、シカ摂食によって森林内の種構成が変化するかを予測することは重要である。
そこで、本研究では、食害の有無による樹木の成長量や死亡率の変化を野外データで検証し、食害を受けやすい種の絶滅が起こるのかをシミュレーションによって評価した。
調査地の屋久島では、島内各地にシカに対する植生防護柵が設けられているため、その内外を比較することで、食害による死亡率や成長量の違いを定量化できる。
島内愛子岳の植生防護柵(2012年3月設置、50m×11.5m)内外にプロットを設け、7m以下の樹木の樹高を6月と9月に測定し、柵内外でそれぞれ6個体以上出現した6種の平均成長量と死亡率を計算した。その結果、シロダモ、ヤブニッケイ、バリバリノキでは、柵外の死亡率が柵内よりも高かった。特にヤブニッケイは、柵内での平均成長量は正(1.25±1.26cm)、柵外での平均成長量は負(-1.33±5.76cm)だった。ただし、いずれの差も有意でなかった。これは、計測個体数が少なかったためと考えられる。
さらに、今回調査した6種を優先種、普通種、ヤブニッケイに分け、モニタリング記録(1998-2013年)から定着率を計算し(それぞれ0.0903、0.0087、0.0056)、SEIB-DGVMによる100年間の動態予測を行った。その結果、今の定着率が100年間維持される場合は、ヤブニッケイの絶滅は生じなかった。ただ、ヤブニッケイの定着率を0.01倍にした場合は、絶滅した。今後はより長期での変化予測を行う必要がある。