| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-129 (Poster presentation)

大峯山系亜高山帯における針葉樹の更新に環境条件が及ぼす影響

*山本美智子, 松井淳, 辻野亮(奈良教育大)

ニホンジカの個体数増加に伴い森林更新の阻害が起こっている大峯山系弥山周辺において、シラビソとトウヒの稚樹の個体数や成長量、実生の出現に影響を及ぼす環境条件を調べた。大規模な防鹿柵を含む約150 ha の地域に100 m2の調査区を100 箇所設置し、環境条件調査、毎木調査(H ≧ 50 cm)、出現実生調査を行った。環境条件には、物理的環境や植生に加えて、シカの利用しやすさの指標も含めた。それぞれの稚樹の個体数や成長量、実生の出現と環境条件の関係について、一般化線形混合モデル(GLMM)または一般化線形モデル(GLM)を作り、赤池情報量規準(AIC)に基づいてモデル選択を行った。さらに、糞塊除去法を用いてニホンジカの密度を推定した。

2009 年から2013 年の間のニホンジカの推定密度は11.7~81.4頭/km2 となった。シラビソ・トウヒへのシカによる剥皮は、稚樹、成木ともにシラビソの方が高い割合で発生していた。また、稚樹への被食もシラビソがトウヒよりも高い割合で受けており、樹種選択性が示唆された。GLMM のモデル選択の結果、シラビソ稚樹は現在シラビソの成木が多く分布している弥山や八経ヶ岳の山頂付近、トウヒ稚樹は比較的緩傾斜で林冠木が少なく明るい環境がある広い尾根部等が個体数の増加に適していると示唆された。また、GLM のモデル選択の結果、シラビソ・トウヒ共に明るくシカの利用しにくい環境で成長量が多くなると予想された。実生は、シラビソは区画内に成木や枯死倒木があり、シラネワラビがない場所で出現し、トウヒは防鹿柵、枯死倒木が過剰、林床が土砂の場合、出現し難いと予想された。シラビソの稚樹は、近隣の成木が剥皮され枯死した場合個体数が減ると予想され、シカの採食によって直接的にも間接的にも影響を受ける可能性が示唆された。


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