| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-130 (Poster presentation)

北海道サロベツ湿原におけるテフラ撹乱実験後13年間の植生変化

*釜野靖子(北大・環境科学),Stefan Hotes(Philipps-University),露崎史朗(北大・地球環境)

日本国内の多くの湿原は古くから火山活動の影響を受けており、国内最大規模の高層湿原であるサロベツ湿原もその一つである。湿原への火山活動の影響については、撹乱直後の植生変動がその後の群集構造の発達を大きく規定するにも関わらず、調査機会を欠くため実証例がほとんどない。本研究は、実験的に撹乱強度を操作し、植生の時間的変化を明らかにすることを目的に行った。

調査地は、サロベツ湿原内のミズゴケ優占区域とした。1m×1mの方形区を60個設置し、2000年9月にテフラを厚さ1cm、3cm、6cm、ガラス粉末を3cm、ガラス粒を3cm、2001年5月にテフラを3cm堆積させ、コントロール(無処理)を含めた計7種類の処理を行った。2005年、2008年、2013年夏に植生調査を行い、出現種数および種ごとの被度を記録した。2013年5月から10月に植生に影響を与えると考えられる環境要因として、地下水位、泥炭水質、泥炭含水率、地表面の光合成有効放射量(PAR)を測定した。

植生調査の結果から、多くの方形区で植生がコントロールへと近づいた一方、2005年にヤチヤナギが優占していた方形区では、ヤチヤナギの被度のさらなる増加と種数の減少が明らかとなった。また、13年経過した時点でも、植生がコントロールと類似した処理区ですら、スギゴケ等の処理前には見られなかった植物が定着していた。環境要因については、処理直後に大きく変化した水質は13年後には処理間の差は見られなくなった一方、PARはヤチヤナギが優占した方形区でその他と比べ有意に低くなっていた。以上のことから、テフラの堆積は数cm程度であっても、競争力の強いヤチヤナギの優占や非湿原種であるスギゴケ定着の促進等を介し、長期的に植生に影響を与えていると結論した。


日本生態学会