| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-131 (Poster presentation)

鹿児島県内天然林の1ha調査区2ヶ所での14年間・22年間の動態

*下西聡一郎(鹿児島大・理工),脇山成二(自然研),山田俊弘(広島大・総合科学),今村文子(紫原中学校教員),鈴木英治(鹿児島大・理工)

鹿児島県霧島山系大浪池の標高1080mのツガ・アカマツが優占する針広混交林に1991年に、大隅稲尾岳の標高700mのイスノキが優占する広葉樹林に1999年に設定した各1ha調査区を2012年と2013年に再測定した結果を報告する。この論文では主に、DBH4.8cm以上の樹木の新規追加、枯死、成長速度、空間分布の解析による林分構造の変化に焦点を当てた。

その結果、大浪池では立木本数(N)4%は増えたが、胸高断面積合計(BA)は18%減った。針葉樹は枯死個体が多かったが、モミ、アカマツ、ツガの順に枯死率、BA減少率が低く、新規個体は3種中ではツガだけで見られた。広葉樹の個体数はハイノキの増加が著しかったが、サカキは減少していた。直径分布では、L字型を示す種は低木種に多く、高木種は一山型を示していた。針葉樹は常緑広葉樹や落葉広葉樹と空間的に排他的であり、22年間で排他的な分布はより強くなる傾向があった。

稲尾岳ではNが3%、BAは9%増えた。優占種のイスノキは新規個体0でNが減ったがBAは増加した。シイ・カシ類3種を含むその他の種の多くは死亡率よりも新規加入率のほうが高い傾向が見られた。ハイノキは減り、サカキは増加した。直径分布では、ほとんどの種がL字型を示し、イスノキ、シキミが一山型を示した。空間解析から、新規個体は生存個体と排他的な傾向を示した。

今後数十年間は、大浪池の林分ではアカマツ・モミが衰退し、閉鎖林冠下でも小径木が見られるツガがさらに優占し、低木性広葉樹の本数割合の高い林分へ移行していくものと考えられる。稲尾岳の林分はイスノキの新規個体は見られないもののBAは増加して、今後もイスノキ林であると同時に、シイ・カシ類の優占度も高くなっていくと考えられる。


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