| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-134 (Poster presentation)

治山堰堤堆砂地におけるアカマツの侵入過程

*今井悠(広島大・総),山田俊弘,奥田敏統(広島大・総)

堰堤工事時に裸地化され、傾斜斜面や流水・湛水などの異なる環境要因が混在する堰堤堆砂地は、アカマツの侵入や更新過程を解明するのに適した立地である。本研究ではアカマツ(Pinus densiflora)の定着及び成長に適した環境を明らかにするため、広島県東広島市松賀山に建設された治山堰堤の上流と下流側の堆砂地において、植生および立地環境の調査を行った。アカマツの位置、樹齢、胸高直径、高さの測定と同時に、5 m四方のサブプロットごと(計52個、総面積1300㎡)の土壌水分・土壌硬度も測定した。その結果、アカマツの齢構成は1~12歳で、樹齢のモードは上流側で8歳、下流側で7歳であることがわかった。調査地は堰堤工事後12年が経過しており、工事直後からアカマツの定着が始まり、工事後4~5年でアカマツが最もよく定着したが、その後は徐々に定着が難しくなっていったと考えられる。土壌水分は堰堤上流側で20~80 %、下流側では20 %前後であった。土壌硬度は上流側で0.5~3.0 kg/c㎡であるのに対し、下流側では1.5~4.5 kg/ c㎡であった。堰堤の上流側で、土壌水分が40~80 %である場所、あるいは水流付近で浸水しているか湛水している場所ではアカマツの個体数は極めて少なかった。以上のことから、治山堰堤堆砂地での土壌の過湿化はアカマツの生育域としては不適であることが推察された。一方堰堤下流側では、アカマツの個体密度が極めて高い場所(10本以上/サブプロット)の土壌水分は20 %前後で、かつ土壌硬度が2.5 kg/ c㎡以上であることがわかった。しかし、上流側にある同じ条件のサブプロットではアカマツの個体密度は低かった。このことから、水分条件、土壌硬度はアカマツの定着に重要だが、それ以外の要因(被陰や土壌質等)もアカマツの定着に影響を及ぼしていることが推察できた。


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