| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-136 (Poster presentation)

モミ-広葉樹混交林の長期動態: 個体ベースでの競争・微地形の影響の解析

*杉山ちひろ(横浜国大院・環境情報),吉田圭一郎(横浜国大・教育),若松伸彦(横浜国大院・環境情報),比嘉基紀(高知大・理),酒井暁子(横浜国大院・環境情報)

森林動態を実証的に解明するためには,長期データを用いて個体ベースでの競争や微地形による影響を考慮する研究が必要である.そこで本研究では,モミ-落葉広葉樹林を対象に,50年間の個体の動態における個体間関係や微地形との対応を明らかにすることを目的とする.

仙台市鈎取山の135×20mの調査区にて,1961年,1981年,2011年に記録された個体の樹種,生死,DBH,樹高,位置のデータを使用して解析を行った.既存研究によると調査地は過去50年間で,落葉広葉樹の個体数が減少しモミの個体数が増加している.そのため,針広混交林からモミ林への移行期間にあると考えられる.そこで,本研究では,個体の成長量,生死における,個体間競争指数,自己サイズ,傾斜角の影響について解析を行い,また微地形ごとに個体数の割合やRBAの変化と死亡率,新規加入率を算出して,森林動態の検討を行った.

GLMで解析を行った結果,個体間競争指数が大きく,自己サイズが小さいほど,個体の成長量が小さく死亡率が高い傾向が見られた.よって50年間のデータにおいて,個体の動態に隣接個体と自己サイズが影響を及ぼしていることが示唆された.一方,微地形ごとに森林動態を解析したところ,個体数の割合の変化は全体の傾向と類似し,他の結果からも本調査範囲での微地形区分においては動態プロセスの違いは見られなかった.個体ベースで解析した結果から森林組成の移行期間において隣接個体の影響が考えられたが,本研究では個体間競争よりも自己サイズの影響が大きく,更新の違いを微地形によって説明することはできなかった.よって針広混交林の動態メカニズムを解明するために,他の空間的な要因などを検証する必要がある.


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