| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-138 (Poster presentation)

鳥取県西部に分布拡大しているアオモジと在来の先駆樹種の皆伐地における発生と成長

*渡部紗矢,川口英之(島根大・生物資源)

クスノキ科の小高木アオモジは近年,分布の拡大が報告されている.アオモジは先駆樹種であることから,その分布拡大は在来の先駆樹種の更新に影響することが予想される.鳥取県西部の森林皆伐地において,アオモジと在来の先駆樹種であるアカメガシワ,カラスザンショウ,ヌルデの発生と成長および光条件を測定し,在来の先駆樹種の更新への影響を考察した.

広葉樹林の皆伐地15m×20mを横切って,2m間隔で2m×2mの調査枠9個からなる調査ベルトを4本設置した.皆伐から2年後のアオモジ,カラスザンショウ,アカメガシワ,ヌルデの本数を実生,切株萌芽,根萌芽に分けて測定した.樹高の最も大きい3本の樹高と地際直径を測定した.調査枠4すみの地上2.5mで全天写真を撮影した.

実生が出現しはじめる光条件は, アオモジで最も暗く, カラスザンショウ, アカメガシワ,ヌルデの順に明るく,皆伐地でアオモジの実生が最も広い面積を利用できた.しかし,アカメガシワとヌルデは根萌芽の発生が林内でも観察され,親個体が存在する場合,広い出現範囲を実現できる可能性を示した. カラスザンショウは皆伐地のまわりに親個体が存在したが萌芽は観察されず,皆伐地での出現範囲に関してアオモジに対して不利であった.実生だけで比べると,アオモジはどの光条件でも他の樹種よりも樹高が大きかった.萌芽を含めた場合でも光条件SOC35%以上または発生2年後の樹高が140cm以上に成長できる場所ではアオモジの実生が優位であった.カラスザンショウは他の2種よりもアオモジと同所的な傾向が強かった.しかし,出現範囲と初期成長ともにアオモジに劣ることから,アオモジの分布拡大によって他の2種よりも更新に大きな影響を受けることが示唆された.


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