| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-140 (Poster presentation)
ウワミズザクラ当年生実生を加害する病原菌の毒性の親木の成長にともなう変化
巴音达拉*・深澤遊・清和研二(東北大学・院・農)
土壌中の病原菌が比較的短期間に、宿主特異的な毒性を発達させることはよく知られている。土壌病原菌は、様々な樹種の成木下の土壌で採取すると種特異的な毒性を示すものにそれぞれ発達していることが近年明らかになっており、病原菌は比較的短期間のうちに局所適応していることが推測される。本研究はこのような局所適応が樹木の成長とともに強まるのか、さらに実生の動態やその後の樹木群集の多様性に影響するのか、をウワミズザクラを例に明らかにすることを目的とする。
本研究では若齢林から7本、老齢林から5本の成木を選び、その成木下におけるウワミズザクラ実生の立ち枯れ病および葉の病気による死亡率を調査した。
結果1.ウワミズザクラ成木の年齢や直径の増加とともに、土壌病原菌による実生の死亡率が増加する傾向が見られた。これらの結果は成木の樹齢やサイズの増大が、土壌病原菌の毒性を増大させることを強く示唆している。
結果2.成木の成長とともに葉の病気による死亡率は低下した。葉の病気は土壌病原菌より季節的に遅い時期に実生を攻撃するので、これは必ずしも葉の病気の毒性の低下を示したものではなく、土壌病原菌の攻撃を免れた実生への葉の病気の加害の割合を示していると考えられる。
結果3.土壌病原菌と葉の病気による死亡率を加算すると、成木の年齢や直径と関係なく、ほぼ一定の高い割合で実生を加害することが明らかになった。
本研究では土壌病原菌は若齢林より老齢林で強い毒性を発達させていることを明らかにした。さらに、若齢林でも種特異的な葉の病気により同種実生の死亡が起こり、結果的には樹齢に関わらず同種実生の高い死亡が起きていることが明らかになった。