| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-141 (Poster presentation)

自然発生的な萌芽枝と親株の光環境・サイズの関係

*吉田幸弘,北山兼弘,小野田雄介(京大森林生態)

森林の内部では、新たな個体が誕生したり様々な要因により樹木が枯死したりするなど、ミクロ的には樹木個体の更新という激しい変化が多く見られる。樹木の更新手段は大きく分けて2つあり、有性生殖を行い生産した種子から新たな個体を成長させる「実生更新」と、親株から直接発生させる萌芽枝を成長させる「萌芽更新」がある。萌芽更新由来と考えられる複幹個体割合は例えば熱帯で15%以上占め、またギャップの占有率が60%以上など、萌芽枝は更新において重要な存在といえる。

萌芽更新に必要な萌芽枝は、親株の主幹が損傷した際に多く発生させることが知られているが、一方で親株の主幹の損傷なしに発生させる樹種が存在することも知られている。このような萌芽枝を、自然発生的な萌芽枝と呼ぶこととする。

主幹が損傷した際に発生する萌芽枝は、親株の樹冠が一部或いは全部失われているため非常に良好な光環境下に存在し、発生した萌芽枝は自ら光合成を行い、自活できる可能性が高い。一方で自然発生的な萌芽枝は、上部に親株の樹冠が存在し、光環境が悪いことが多い。このため光環境の悪い環境下の萌芽枝は、親株に炭素資源を依存する必要があり、萌芽枝の発生だけでなく維持も、親株のコストとなってしまう。

このように考えると、どのような光環境・個体サイズの親株から萌芽枝が発生し、維持されていたかという特徴に、種内パターンや種間差が存在すると考えられる。

そこで

1:当年性の自然発生的な萌芽枝がどの程度発生したのか

2:2~5年性の萌芽枝がどの程度維持されているのか

以上の2点を調べ、自然発生的な萌芽枝の発生コストと維持コストの観点から、自然発生的な萌芽枝の役割を考察する。


日本生態学会