| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-150 (Poster presentation)
外来種であるアライグマは生息域を全国規模で広げており、北海道十勝地域においても近年その生息が確認され捕獲が相次ぐようになった。アライグマは在来種の捕食や農作物被害を起こすことに加え、ヒト及び家畜の病原体伝播に関与している可能性も指摘されている。特に畜舎はアライグマの採餌・営巣場所として重要な役割を持っており、畜産業が盛んな十勝のアライグマにおける家畜病原体の感染状況を把握することは家畜防疫上重要である。本研究では、アライグマによる病原体伝播のリスク評価を行うとともに、アライグマの栄養・繁殖状況に影響を与える環境要因を検討した。
十勝で捕獲されたアライグマにおけるサルモネラ(藤井ら, 2012)・ロタウイルス・トキソプラズマに関する保菌・抗体保有状況を調査したところ、いずれも10%程度の保有率であった。
オス37頭、メス36頭の栄養状態(Body Mass Index : BMI)とメス24頭の産子数(胎盤痕の数)について、捕獲場所周辺の自然景観や畜舎密度等の景観構造との関連性を検討したところ、河畔林がメスのBMIに正の影響を与えていることが示唆された。また、平成18年以降の捕獲情報の空間パターンを時系列で追ったところ、分布が拡大傾向にある様子が観察された。
十勝のアライグマは家畜病原体を伝播しうる存在であることが推測され、家畜防疫上、畜舎周辺から排除するとともに分布の拡大を阻止することが望まれる。また、河畔林がアライグマの栄養状態に正の影響を与えていることから、個体群動態にも影響していることが考えられるため、今後は密度や病原体感染率との関係性についても検討を行っていきたい。