| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-151 (Poster presentation)

河川と湖で異なる外来魚チャネルキャットフィッシュ Ictalurus punctatus の行動パターン

*吉田誠, 佐藤克文(東大・大気海洋研)

【背景と目的】淡水に生息する大型魚チャネルキャットフィッシュ Ictalurus punctatus (通称アメリカナマズ、以後通称で記載)は特定外来生物に指定されており、現在、国内複数の水系で分布を拡大しているため、早急かつ効果的な対策が必要である。本研究では、複数の水域に移入した本種が、異なる環境下でいかに振る舞うかという生態学的な知見を得るため、河川(矢作川)および湖(霞ヶ浦)でバイオロギング手法を用いた調査を行なった。

【方法】2012年7月-2013年7月にかけて、霞ヶ浦北岸および矢作川中流で捕獲したアメリカナマズにVHF電波発信機と加速度ロガーを装着して放流し、自動切離し装置を用いて機器のみを回収した。ロガーは3軸方向の加速度(10Hz)と深度(1Hz)を記録するよう設定した。加速度を元に個体の「活動度」を定量化し、個体の活動度と、昼夜・水位・濁度変化との関係を調べた。また、深度と加速度を1秒ごとの詳細な時間スケールで解析し、遊泳行動の特徴を河川と湖で比較した。

【結果】取得した加速度データから各個体の活動度を算出した結果、霞ヶ浦では、アメリカナマズは夜間に活発になる明確な傾向を示した一方、矢作川では、夜間ないし河川の水位が高い時、あるいは河川水の濁度が高い時に活発であるとわかった。また、霞ヶ浦ではほぼ全ての時間帯で、湖底付近の深度に留まって活動と休息を繰り返していたのに対し、矢作川では活発に泳ぎながら水面付近へ浮上する行動が数多く記録されており、両水域で異なる行動パターンを示した。以上の結果は、アメリカナマズの行動が、流況の安定性や餌環境など、生息水域ごとに異なる環境条件を反映している可能性を示唆している。


日本生態学会