| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-153 (Poster presentation)
外来種が新たな地域に侵入した際、侵入直後から生息域を拡大しない状態が維持される潜伏期間を要する場合がある。この期間の存在は、密度の増大や新規環境への適応進化に向け遺伝的多様度を高めるためである(Cox, 2004)。小笠原諸島に侵入した侵略的外来種グリーンアノールAnolis carolinensisは侵入後、潜伏期間を経て父島・母島共に分布を拡大させ、様々な在来種を激減・絶滅させた(槇原ら,2004;戸田ら,2009)。本種は沖縄本島にも侵入しており、南部を中心に高密度で生息している(環境省, 2010)。現在、生息密度は年々増大傾向と推測されているが(環境省, 2012)、侵入後約25年経過しているにも関わらず大幅な拡大は報告されていない。本研究では、沖縄に侵入したグリーンアノールの起源を解明すると共に、どのような環境要因により分布を制限されているのか推定し、今後どのような環境変化や環境に対する適応進化が分布拡大を促進するのかを予測することを目的とする。系統解析の結果、沖縄集団から2種類のハプロタイプが検出され、どちらもフロリダ以北集団を起源としていた。次に、生態ニッチモデルにより予測された分布図は、現在の生息域と一致し、分布に影響する要因として、年平均最低気温や市街地、日射量などが検出された。これは、グリーンアノールは気温が高く、開けた環境を好むことが関係していると考えられる。今後、温暖化による気温上昇や開発による開けた環境の増加で分布が拡大すると予測される。また、起源となる北米では、より低温の環境にも適応進化しているため、今後、低温環境への適応によっても拡大することが予測された。