| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-001 (Poster presentation)

生物群集に対する人為活動と環境要因の影響を相対的に評価する:木材腐朽菌群集を例に

*山下聡(森林総研),服部力(森林総研関西),阿部真(森林総研),後藤秀章(森林総研九州),佐藤大樹(森林総研)

1970年代から沖縄において行われてきた育成天然林施業は,林床に伐採残渣を放置するため,植生と林床の粗大有機物の構成を変化させる。粗大有機物を利用する大型木材腐朽菌類の群集構造に対する育成天然林施業の影響を明らかにするために,粗大有機物と植生の変異による影響と育成天然林施業の影響を分離して評価した。2006年12月に,施業後1~22年経過した13プロットと施業履歴のない3プロットを設置し,枯死木から多孔菌類の子実体を採集して種まで同定した。枯死木の本数と体積は施業直後で最も高い傾向があった。4目81種1172種の多孔菌類が記録された。多孔菌類の種構成と枯死木の構成との間に関係が認められた。また,施業後1年目の林分では菌類の種構成は、他の施業履歴のある林分における種構成と異なった。冗長性解析を用いた分散の成分分解を行ったところ、菌類の種構成の全分散は、育成天然林施業の影響によって14.1%が説明されたのに対し、施業と関係しない植生と枯死木の変異によっては40.4%が説明された。これらの交互作用によっては2.7%が説明されたのみであった。本研究の結果からは、育成天然林施業の影響よりも粗大有機物と植生の変異によって、大型木材腐朽菌類群集は強く影響を受けているものと示唆された。


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