| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-003 (Poster presentation)
近年熱帯域では、森林からアブラヤシ園への土地利用転換が急増し、森林の生物多様性の劣化や炭素貯留量の減少の問題を引き起こしている。また開発されたアブラヤシ園内においても単一的な環境下で大規模に大量の農薬を用いるため、生物多様性の劣化や環境劣化の問題が深刻である。それらの問題の改善の糸口として園内での河畔植林がある。河畔植林はアブラヤシ果実生産に被害を与える野鼠を駆除する生物的防除の効果も期待されている。
本研究では、マレーシア半島部のアブラヤシ園内に造成された河畔林を対象とし上記の効果を検証する。足跡を用いたトンネルトラッキング法により河畔林が周囲の野鼠の出現頻度に与える影響を、また目視観察調査により河畔林木の野鼠の天敵である猛禽類の止まり木としての可能性を明らかにすることを目的とした。
河畔林のある河川沿いから45m中に入ったアブラヤシ園を「河畔林域」とし、河畔林の無い同一河川上流1kmの同様な範囲を「対照域」とした。さらに各区域を河川から0~5mの範囲の「河川沿い」と、5~45mの範囲の「アブラヤシ園内側」に二分した。
河畔林域の野鼠の出現頻度は対照域よりも有意に大きくなった。しかしこれは作業道による分断によりもともとの個体数の差が影響したとも考えられる。そこで各区域内において河川沿いとアブラヤシ園内側の比較を行ったところ、対照域においては河川沿いとアブラヤシ園内側に有意な差が見られなかったにもかかわらず、河畔林域では河川沿いの出現頻度が有意に低くなった。これは河畔林が野鼠の出現頻度の減少に寄与したことを示している。また目視観察調査の結果、実際に猛禽類による河畔林木の利用が確認されたことも踏まえると、河畔林の天敵防除効果は期待できる。