| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-005 (Poster presentation)
近年、スギ人工林の間伐遅れによって、木材生産の機能だけでなく環境保全機能も損なわれている。特に、林床植生の衰退による土壌流失が著しい。そこで林床植生の回復を目的として強度間伐による施業効果を検証した。森林管理において間伐はチェーンソーによる高度な技術を必要とするが、一部には鉈で環状剥皮を行う簡便な巻き枯らし施業も行われている。本研究では、施業後、8年間にわたって渓流域に造成されたスギ人工林においてこの二つの施業効果を比較した。2005年に樹齢38年生のスギ人工林において60%の伐採および巻き枯らしによる間伐をおこない、無間伐区と比較を行った。2004年5月、2008年9月、2013年7月の5年間隔でスギの胸高直径を測定、また、間伐前から毎年、全天空写真を撮影した。林床植生の変化を把握するために1m×1mの調査プロットを設定し、侵入した植物の被度を測定した。巻き枯らし区において、1年間は全く落葉しなかったが2年目から急激に落葉し始め、3年目でほぼ全個体が落葉を終えた。それに伴い、林冠の空隙率も徐々に増加したがその後は枝の伸長により減少を示した。間伐区は伐採によって急激に空隙率が増加したが、その後、枝の伸長と下層木の繁茂に伴って減少した。林床植生の被度は伐採区では急激に増加し、8年後の時点でリターを除去したプロットでは70%、除去しなかったプロットでは40%に達した。一方、巻き枯らし区では、各々50%、5%であった。この結果から、林床植生の回復を目指すためには、リターの除去を行うことが効果的であることが明らかになった。スギの生長に関しては伐採区と巻き枯らし区は無間伐区よりも早い成長を示したが、両者の間に差は見られなかったことから、巻き枯らしも成長を促進する効果が認められた。