| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-008 (Poster presentation)
乾燥地草原では過度な土地利用により植生荒廃が進行している。火入れは荒廃草原における有効な植生回復ツールとして期待されており、火入れによる荒廃植生の除去や土壌への灰供給、地表の高温化が実生更新や成長、植生構造を変化させる。放牧地では、火入れが植物生産や植物栄養価を高めるようだ。一方乾燥地では、火入れ後に植生遷移が進まず、植生回復に寄与しない可能性がある。
モンゴルステップでは、過放牧による植生荒廃として、乾性環境での植生の衰退および湿性環境での不嗜好性種の優占がみられる。本研究は、モンゴル荒廃ステップにおける火入れの植生回復への有効性を検証するため、火入れによる土壌および植生変化を異なる荒廃タイプの草地間で比較した。
荒廃タイプの異なる2サイト;Alragant (ALG; 植生衰退)およびHustai (HNP; 不嗜好性草本優占)、に各4サイトを設置し、2011年春に火入れ試験を行った。火入れ前・後に、土壌特性、埋土種子、実生更新、栄養成長、植生構造、植物バイオマスおよび飼料価値を測定した。
土壌養分は火入れにより変化しなかった。火入れにより埋土種子数は減少したが、実生更新は火入れ前後ともに少なく、植物被度は栄養成長により回復した。一方、植物種構成は火入れ後に変化し、不嗜好性草本が減少、嗜好性禾本が増加した。HNPでは火入れ後の植物バイオマス、飼料価値が増加したが、ALGでは変化しなかった。
このように、火入れは不嗜好性種優占草地では嗜好性禾本への置きかわりを促し、植生衰退草地ではより衰退させる可能性がある。本研究は、乾燥地草原における火入れの植生回復ツールとしての有効性を示すとともに、火入れを回復ツールとして利用する際に草地の荒廃状態を考慮することの重要性を示している。