| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-009 (Poster presentation)

林道はカエルのよい餌場?-餌動物の林道・林内間比較-

*岩井紀子(農工大),亘 悠哉(日林協),石井光,赤坂宗光(農工大)

林道は、森林管理や周辺住民の移動のために森林に敷設される、人間にとって有用な構造物である。しかし、野生生物保全の観点からは、交通事故や生息場所の改変を引き起こし、生物に負の影響を与えるものとされることが多い。カエルは林道による負の影響を受けやすいとされているが、小規模な林道沿いでは逆に多く観察されることがある。小規模な林道においては、カエルの餌資源である地上徘徊性動物量が多く、林道がカエルにとって好適な餌場として機能している可能性が考えられる。本研究では、稀少なカエルが多く生息する奄美大島において、カエルの餌動物量を林道上と林内で比較した。奄美大島の3地域、22地点における幅5 m以下の林道において、林道上および林道から10 m林内に入った地面に、粘着トラップを5個ずつ設置し、一晩経過後に回収した。捕獲された餌動物は、生物分類上の10カテゴリーに分け、各カテゴリーについての既存のアロメトリー式を用いて、各個体のサイズから乾燥重量を推定した。各地点の林道上および林内で捕獲された餌動物の総乾燥重量の比較を行った結果、餌動物量に相違は認められなかった。また、各地点における各カテゴリーの捕獲個体数の類似度についても、林道間、林内間、林道‐林内間で相違は認められず、林道と林内における餌動物の種組成は異なるとは言えなかった。以上より、林道はカエルの餌動物を多く提供する場としては働いていないことが明らかになった。林道は林内より明るく、遮蔽物が少ないことから、餌動物を視認しやすい可能性があり、今後は捕獲効率の観点からも林道の効果について検証する必要がある。


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