| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-011 (Poster presentation)
市街地における野生動物の出没・被害問題が、近年全国各地で勃発している。人口密度が高く交通量の多い市街地に野生動物が出没すると、人身被害や交通事故など緊急的かつ甚大な被害が発生する危険性が極めて高い。そのため都市環境ならではの対策の検討が急務である。神戸市では、イノシシへの餌付け行為により、人馴れしたイノシシが市街地に出没して被害を発生させている。2002年に神戸市では、全国初のイノシシ餌付け禁止条例を施行した。条例の効果はみられたものの、未だに餌付け行為の根絶が難しく被害はなくならない。そこで本研究では、被害発生と餌付けとの関係を示すこと、餌付け行為以外の出没・被害発生要因を明らかにすることで、今後のイノシシ対策を検討することを目的とした。
神戸市の2区に蓄積されている、2008~2012年の住民からのイノシシに関する苦情・通報対応記録598件、有害捕獲報告512件、餌付け場所31地点の情報を用いた。苦情・通報と有害捕獲は、年度と季節ごとに区分した。苦情・通報場所はGIS上に地点を落とし、餌付け場所、林縁、緑地環境、河川との距離を算出した。その結果、苦情・通報件数は年度の違いがあったが、全体として4~9月に多かった。一方、有害捕獲数は10~3月に多かった。苦情・通報は、餌付け場所、緑地環境、林縁から近いほど多かったが、河川との関係は見られなかった。以上より、神戸市におけるイノシシの出没は、捕獲圧の低くなる春~夏にかけて発生しやすいこと、イノシシが身を隠すことのできる緑地環境に近く、市街地へと誘引する餌付け場所に近いほど被害が発生しやすいことが明らかとなった。今後は、餌付け根絶への普及啓発とともに、出没・被害の多い時期に緑地環境周辺の住民に対してイノシシ被害の注意喚起を行うことが重要と考える。