| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-012 (Poster presentation)
土地利用の変化は、生物多様性を脅かす重大要因の一つである。特に人間活動によって物理環境を維持させてきた農業生態系では、土地利用変化による生物多様性への影響が極めて大きい。近年、農業活動の縮小に伴う耕作放棄が急速に広がっており、食料生産だけでなく、農業生態系における多くの生物にも様々な影響を与えている。近い将来、どんな場所が放棄されるのかを把握することができれば、戦略的な対策を講じることができるかもしれない。そこで本研究は、現時点で耕作放棄された農地についての立地解析を実施し、放棄されやすい条件を日本全国スケールで検討した。
生物を扱う農業活動は、生産する品目、品種等について地域の気象に大きく影響を受けると考えられる。同時に産業である農業活動の規模は、地域における従事者数等の社会要因にも影響を受けると考えられる。気象要因、社会要因は地域によって大きく異なる。そこで、全国および北海道、本州、四国、九州それぞれを対象に、耕作放棄面積を非説明変数に、気象等の自然要因、農業従事者数等の社会要因を説明変数にした統計モデルを構築することで、耕作放棄が広がる放棄条件および、その相対的な強さを定量化した。その結果、放棄されやすい条件は日本中で一律というわけではなく、地域性があることが示唆された。具体的には、農業活動が大規模である傾向が強い北海道では気象条件が放棄を引き起こす主要な要因であり、相対的に規模が小さい内地では、社会要因が放棄を引き起こす主要な要因である可能性が示された。