| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-016 (Poster presentation)
近年多くの浅い富栄養湖でヒシ属植物の増加が湖沼管理上の問題となっている。ヒシ属植物は葉が水面を覆うため、水質や底質に影響を与えると予測される。本研究では、オニビシが繁茂する印旛沼において、オニビシの繁茂が水質と底質に与える影響を明らかにすることを目的とした。
オニビシ帯は、オニビシの繁茂している夏期に、開放水面に比べ溶存酸素濃度、濁度、クロロフィルa量が低く、アンモニウム態窒素濃度が高いことで特徴づけられた。一方、オニビシが繁茂していない時期には、地点間でこれらの水質項目に明瞭な差は見られなかった。オニビシ帯での溶存酸素濃度の低下は特に底層で顕著であった。オニビシ帯での濁度の低下は、オニビシ帯による底質の巻き上げ抑制が関係していると推察された。オニビシ帯の下では、光や栄養塩が不足することで、植物プランクトンの成長が抑えられていたと考えられる。また、オニビシの枯死分解に伴い無機態窒素が放出されたことが示唆される。さらに、底質間隙水の全リン濃度と底質の強熱減量が、開放水面に比べオニビシ帯で年間を通じて低かったが、オニビシがどのように影響しているのかはわからなかった。
オニビシを縞状に刈り取った場所では、大規模なオニビシ帯に比べ、溶存酸素濃度が改善される傾向が見られた。しかし、刈り取った後にはアオコ(植物プランクトン)の発生が見られた。アオコの大発生を抑制しつつ低酸素状態を改善できるような、オニビシの刈り取り管理方法の開発が望まれる。