| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-021 (Poster presentation)

霧ヶ峰における火入れの延焼とその影響のモニタリング

須賀丈*, 尾関雅章, 堀田昌伸, 富樫均, 浜田崇, 岸元良輔, 大塚孝一(長野県環境保全研), 岡本透(森林総研関西支所)

霧ヶ峰には本州最大級の半自然草原が残存する。この草原の成立は花粉分析や考古資料などから中世頃とされてきた。このうち諏訪市域の一部の区域では、草原の再生などのため2005年以来火入れが行われてきた。しかし2013年春の火入れが10haの予定区域から延焼し、その範囲は茅野市域を含む220haにおよんだ。延焼地では前年までに森林化防止のため「雑木」の伐採がなされていた。今回の延焼をうけ、この火入れは当面中止の方針が出された。この延焼の生物相への影響を把握するとともに草原成立の史的背景を再検討するため、微気象環境と生物相(植生・鳥類・蝶類)のモニタリングおよび土壌の調査を開始した。

これまでに以下の作業に着手した。延焼地の植生回復状況の面的把握のため、2013年5月と6月のリモートセンシング画像を取得した。延焼とシカの採食による影響を評価するため、延焼地と非延焼地にまたがるシカ柵を設置し、近接して柵を設けない対照区を設置した。延焼地と非延焼地で、気温・地温・土壌水分・反射日射の測定を開始し、また植生(植被率・群落高・出現種数・種組成)の調査を行った。主に火入れ地・延焼地を通過するルートで鳥類および蝶類のラインセンサスを行った。延焼地内2地点で土壌断面(深さ100cm・50cm)を調査し、腐植質土の放射性炭素年代を測定した。

これまでの測定の結果、延焼地では非延焼地よりも地温が高く、土壌水分が少ない傾向がみられた。植被率と植物の出現種数に差はなく、群落高は延焼地の方が低かった。鳥類と蝶類では草原性の種が多く、林縁的な区域とより開放的な区域とで種組成にちがいがあった。2地点の黒色土層最下部の14C年代は、それぞれ5100±30、2670±30 yBPの値が得られた。今後項目をしぼって数年間調査をつづける予定である。


日本生態学会