| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-023 (Poster presentation)

北海道中央部のトドマツ人工林とその周辺森林の源流域における底生動物群集の特徴と環境要因の関係

*長坂晶子,長坂有,山田健四(道総研林試)

北海道中央部のトドマツ人工林を主体とする山地渓流において、渓床に貯留される有機物・土砂および底生動物を採集し、林相やこれまでの施業履歴と有機物貯留量・底生動物相との対応関係を検討した。流域面積5~10ha程度の小流域12カ所(トドマツ人工林(7カ所)・広葉樹が混交するトドマツ人工林(2)・天然生広葉樹林(3)の3タイプ)に調査定点を設定し、2013年10月下旬にサンプリングを行った。メッシュサイズ8㎜の金網で作製した箱に礫径2~8cmの礫を予め入れたうえで渓床に埋設し、1ヶ月後に取り出して礫以外の土砂、有機物を試料として実験室に持ち帰り処理を行った。

貯留有機物はトドマツ人工林>混交林≧広葉樹林の順に多く、とくに1㎜以下の細粒有機物量で差が顕著だった。粗砂・細砂の量もトドマツ人工林>混交林≧広葉樹林の順となり、トドマツ人工林のほとんどの採集地点では、粗砂・細砂によって礫間が隙間なく埋められていた。ほぼすべての地点で採集された分類群として端脚目エゾヨコエビ、カクツツトビケラ属、ユスリカ科、カワゲラ科が、トドマツ人工林で特に多く見られた分類群に双翅目幼虫、水生ミミズ類が特徴的であった。一方、混交林・広葉樹林では、双翅目幼虫がほとんど採集されなかった。また天然生広葉樹林ではトビケラ目の種類が増加(イズミコエグリトビケラ科など)した。1㎡あたりの個体数は トドマツ人工林>広葉樹林>混交林の順だったが顕著な差はなかった。CCA(正準対応分析)により底生動物相は大きく三分(広葉樹主体・トドマツ人工林主体・各林相混合)され、土砂量の多寡が群集構造を特徴づけることが示唆された。すなわち、粗砂・細砂が多くても生息できる底生動物(ユスリカ科、双翅目幼虫、シマトビケラ科)がトドマツ人工林に多く出現することを反映していた。


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