| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-025 (Poster presentation)
青森県津軽地方を流れる一級河川岩木川の上流には,銅・鉛などを採掘していた旧鉱山施設があり,その下流の目屋ダム再開発により津軽ダムが建設中である。東ほか(2012)は,目屋ダム下流域において定住性の高い魚類(カジカ大卵型)の生体内微量元素を計測した結果,ダム放流水の影響を強く受けているエリアからはいくつかの高濃度の元素が検出されるが,下流に移動すると急激 に影響が減衰していることを報告した。本研究では2013年4月から10月にかけて河川水等を20地点採集し,このような生物中元素の変動要因に対して,河川水の溶存態と懸濁態の元素それぞれがどのように寄与しているか考察を行った。
溶存態では全分析地点の中で,旧鉱山施設からダムへの流入河川においてMn, Fe, Cuなど9元素の濃度が最も高く,鉱山残渣が源だと考えられる。一方,ダム水放流後の地点において6月,8月,10月で他の地点に比べてNa, V, Crなどの濃度が高く,ダム下流河川がダムの影響を受けていることを示唆していた。Mnなどいくつかの溶存態元素はカジカ大卵型体内元素で検出されたようにダム湖水放流直後に高濃度となりその後の距離減衰が認められたが,懸濁態で輸送される元素は採水時期による変動が大きく、顕著な傾向が見られなかった。このように生物体内に含有される元素濃度は,時間軸の積分的な要因が大きく,変動する河川水中の濃度変動を平滑化しており,またそれは溶存態の貢献が大きいことが示唆された。