| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-026 (Poster presentation)

モンゴルにおける災害時の避難先として整備された非常用草地の植生退行:ヘンティ県ヘルレンバヤンウランの事例

*大黒俊哉, 柿沼薫, エリデニ(東大院・農), 坂本圭児(岡山大院・環境), ウンダルマ・ジャムスラン(国立モンゴル農業大学)

モンゴルの遊牧システムに関する近年の研究により、遊牧民は、経済状況の差異に起因する移動性の違いによって、災害時には異なるスケールの空間異質性を利用し生存を図ろうとしていることが明らかになっている。低移動性の遊牧民は、地形立地的に分布が制限されたkey resource(KR)群落に依存するため、こうした遊牧民については、グループ化による共同管理等を通じた、セーフティネットとしてのKR群落の保全が必要である。一方、高移動性の遊牧民は、長距離移動により気候災害発生域から脱出が可能であるが、受け入れ先での草原劣化や飼料不足、紛争が問題となるため、遊牧民の移動性の向上とその受け入れ先(非常用牧草地等)の適切な整備が求められている。しかしながら、南部の高移動性の遊牧民が北部の非常用草地を利用することにより、草地に対してどの程度のインパクトを与えているかについてはほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、災害時の避難先として整備された非常用草地の現況を把握するため、モンゴル国ヘンティ県ヘルレンバヤンウランの非常用草地において、植生調査および刈り取りによる機能タイプ別地上部現存量調査を行った。その結果、Koeleria macranthaFestuca lenensis等飼料価の高いイネ科多年草の優占する優良草地が山麓緩斜面を中心に残存することが確認された一方で、Artemisia spp.の優占する退行草地が、低地〜ヘルレン川沿岸部にかけて広がることが分かった。また、これらの植生タイプの分布は、季節によって異なる宿営地の分布と関係することが示唆された。


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