| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-029 (Poster presentation)

干潟の物質循環とベントス群集に及ぼす底質性状の影響:沿岸域底質管理の重要性を考える

*坂巻隆史(東北大・災害科学),盛田暁子(東北大院・工),山村真以(琉球大・工),河井崇(琉球大・理),鈴木祥平(東北大・災害科学)

干潟は物質循環・生物多様性保全・親水空間等の視点から沿岸域における重要な生態系と認識されている.その保全の重要性は社会的にも広く認識されつつある一方で,干潟生態系の機能についての定量的理解は未だ不十分である.特に,干潟生態系の基盤ともいえる底質の性状は,干潟および周辺の地形や水理環境等に影響を受け場によっても大きく異なる.さらに底質の性状によって干潟の物質循環や生物相が大きく異なることは広く知られている.しかしそれらの定量的な関係性についての理解は不十分であり一般化には至っていない.本発表では,沖縄本島内の16河口干潟で行った調査をもとに,底質-直上水間の栄養塩交換ならびに底生動物群集構造に及ぼす底質性状の影響に関する解析結果を報告する.栄養塩交換については,含泥率や藻類起源易分解性有機物含有量の上昇にともない硝酸態窒素の溶出が減少する傾向が顕著であった.これについては,底質での酸素消費ならびに脱窒との関連性が推察される.また,底生動物群集については,摂餌形態や生息形態等に基づく機能群に分類して解析した結果,営巣性と肉食の動物の密度が含泥率の上昇とともに大きくなる傾向がみられた.さらに着目すべき結果として,上述の窒素交換フラックスおよび底生動物の生息密度は,底質含泥率5-10%程度を閾値として急激に変化する傾向がみられた.これについては,含泥率の上昇とともにその閾値を境にいわゆる非粘着性の砂質から粘着性の砂泥質さらに泥質へと底質の物理的性状が大きく変化したためと推察される.これらの結果は,沿岸域生態系における粘着性に着目した底質管理の重要性を示唆するものと解釈できる.


日本生態学会