| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-030 (Poster presentation)
戦後の拡大造林は、日本の森林生態系の感受性(susceptibility)と回復力(resilience)に大きな変化をもたらしていると予想される。日本の主要なかく乱である台風かく乱は、気候変動により増幅するとみられているが、人工林化による森林生態系への影響は、天然林との比較から正確に査定する必要がある。そこで、過去50年間に日本に上陸した台風に際して報告されている森林の倒壊率(本数倒壊率)から人工林の感受性を、また、風倒後に再生の原動力となる埋土種子・実生・稚樹の密度から、人工林の回復力を、各々、天然林との比較により評価を試みた。冷温帯については、人工林はトドマツ林とカラマツ林、天然林はトドマツ・ミズナラの優占する針広混交林を対象とし、暖温帯については、人工林はスギ林とヒノキ林、天然林はシイ・カシ・コナラ類の二次林を対象とした。文献調査の結果、暖温帯における天然林については十分なサンプル数が得られなかったが、それ以外の林分については10件以上のサンプル数を確保できた。集計結果の一部は以下のとおりである。冷温帯における人工林の倒壊率(トドマツ林23%、カラマツ林57%)は、天然林(針広混交林3%)より高く、人工林の強風に対する感受性の高さを示していた。いっぽう、トドマツ人工林(実生41,136本/ha・稚樹1,670本/ha・埋土種子10個/m2)は天然林(実生5,483本/ha・稚樹45,311本/ha・埋土種子683個/m2</sup)に比べ、稚樹密度と埋土種子密度が低く、人工林の回復力の低さを示していた。