| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-031 (Poster presentation)

大阪府におけるニホンジカのモニタリング-現状と課題-

*幸田良介,虎谷卓哉(大阪環農水研)

大阪府では、全国各地と同様にシカによる農林業被害が深刻化しており、特定鳥獣保護管理計画による対策が進められている。計画が目指す科学的管理のためには、シカの生息状況や被害状況についてモニタリングし、結果をフィードバックしていくことが必要である。大阪府ではこれまで、出猟カレンダーによる目撃効率と捕獲効率の調査、農業被害アンケートによる被害意識調査、シカ糞調査及び森林の下層植生衰退度調査が行われてきた。今回、これまでに行われてきたモニタリング結果を整理し、現状の把握と今後の課題点の抽出を行うことを目的とした。

平成19年度以降の目撃効率や捕獲効率の経年変化から、大阪府におけるシカ個体数は増加し続けていることが推測された。また、農業被害アンケートによる出没頻度と被害強度の結果からも、農地へのシカの出没が増加し、被害が増加していることが示唆された。一方で糞粒調査では、平成23年度までは糞粒数が増加傾向にあるものの、平成24年度には一転して大きく減少するなど異なる結果が得られた。糞粒調査地の多くはハイキング道など人の利用の多い場所であり、調査面積も100m2とやや狭い。糞粒調査については今後、調査地や手法の変更を含めて改善策を検討する必要があると考えられる。

シカ生息密度の空間分布については、目撃効率や捕獲効率と農業被害アンケートで概ね同様の結果が得られた。また、森林の下層植生衰退度の分布でも、シカ密度の高い地域で下層植生の衰退が進んでいることが示唆された。その一方で、5kmメッシュごとの目撃効率や捕獲効率の分布図では、年変動が大きいことも明らかとなった。大阪府は府境界が細長く銃猟禁止区域も多いため、出猟データによる空間分布の把握が難しい。糞粒調査地の変更を含めて、空間分布を詳細に把握できるモニタリング手法の検討が今後必要であろう。


日本生態学会