| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-032 (Poster presentation)

イノシシの生息地としての六甲山系のハビタット評価

横山真弓(兵庫県立大/森林動物研究セ)・辻知香(森林動物研究セ)

都市環境に隣接して位置する六甲山系には、ニホンイノシシ(Sus scrofa leucomystax)が生息しており、様々なあつれきを引き起こしている。昭和40年代にはすでに市街地に出没し、問題となることがあった。近年においても都市部に出没を繰り返し、人身事故をはじめとした問題が発生している。都市部における出没の主要因は餌付けによるところが大きいと考えられることから、神戸市では餌付けを禁止する条例を制定して都市環境への誘引を食い止めるための普及啓発を実施している。また、市内では、年間約600頭を有害捕獲しているにも関わらず、出没被害の抜本的な解決には至っていない。六甲山系における生息数等に関する情報はないが、被害や捕獲の状況から好適なハビタットがあり、順調に個体群が維持されていると考えられる。しかし、イノシシの生息地としての六甲山系のハビタット評価は行われていない。都市環境に隣接して生息するイノシシの生息地としての評価は、適切な保護管理を検討するうえで重要な知見となる。

そこで本研究では、イノシシの行動分析及び痕跡調査から明らかとなった環境選択と六甲山系の植生の変遷から、現在の六甲山系のハビタット評価を行うことを目的とした。イノシシの環境選択については、広葉樹林と農地が接する地域で得られたGPS首輪による追跡データを用いた(横山ほか2007)。また痕跡調査は、2013年6月から12月までのデータを用いた。過去の植生図は、古地図(1900年代は迅速測図、1950年代は国土地理院発行の5万分の1の地形図)をデジタル化した。現在の植生図は、環境省が公表している自然環境保全基礎調査データを用いた。これらの情報からイノシシの行動圏としての選好性を算出し、現在の六甲山系の植生環境について検討する。


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