| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-096 (Poster presentation)

地域型小規模自然博物館の役割-自然教育活動「かもしか学園」の取り組み-

武浪秀子(大井沢自然博物館)

近年、公立や私立の等の大・中規模自然史系博物館は、一般・学校を対象とした普及啓発活動に力を入れており、積極的な取り組みを実施している。また、地方の公立(町・村立)や私立の小規模な自然史系博物館でも同様の取り組みを行っているが、職員不足や管理・運営上等の様々な課題があり発展途上の状況である館も少なくない。

山形県の中央部に位置する西川町大井沢地区には、1954年に県から博物館指定された町立の大井沢自然博物館が建つ。大井沢自然博物館は、1951年に始まった大井沢小中学校の「自然研究(自然学習)」等の自然教育プログラムが発端となり、住民と学校が連携して作り上げた地域型小規模自然博物館である。この自然教育プログラムは、全国の自然教育活動の先駆けとなり、地域では「かもしか学園」と呼ばれその内容は大学レベルに匹敵するものとなった。2007年の大井沢小学校休校に伴い「かもしか学園」の活動は休止したが、過去の実績や多種多様な自然史資料は、本県の自然環境を知る上で重要なものとして県内外の研究者に高く評価されている。そのため博物館では、地域の自然環境を中心とした情報収集や情報交流、普及啓発活動を重要な役割としている。しかし、1990年(8,554人)頃から少子高齢化による町の人口減が加速し、2013年には人口6,220人となった。少子高齢化による財政難や人材不足等問題を抱える一方で、博物館に対する自然教育活動のニーズは高まっている。

本発表では、「かもしか学園」の取り組みをもとに地域型小規模自然博物館が、自然環境教育へ果たす役割や博物館の必要性について検討したい。自然環境教育の充実化を図るためには、フィールドでの実践教育や実物標本・資料の活用を積極的に取り入れることが効果的であり、小規模自然博物館はその重要な連携施設として期待される。


日本生態学会