| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-097 (Poster presentation)
絶滅危惧種を保全するためには、長期間のモニタリングと生息地の保全が必要である。それには行政だけでなく、地域住民との連携が求められるが、そこでは世代を超えた継続が必要とされ、次世代への教育が不可欠である。教育普及の手段の一つに学校教育があるが、今回のような山間地の場合、学校は地域社会の中心にあるといっても過言ではない。たとえば学校の運動会や文化祭が地区の運動会や文化祭も兼ねており、PTA以外の地域住民もそこへ参加している。このため学校教育は地域社会への浸透性や地域外へ向けた情報発信力という点で大きな鍵を握っている。しかし、保全に取り組む外部と、教育を行う学校現場とでは、その目的は大きく異なっており、両者の連携は、現状では満足とは言い難い。そして、学校教育の潜在性を引き出すためには両者が歩み寄り、互いに目的を達成できるようになるための模索が必要である。新潟県長岡市立中野俣小学校は全校児童15名の複式学級の小学校である。山間部に位置するが、新潟県中越地震以降、地域の人口が減少し続けており、その影響で児童数も減少傾向にある。しかし、そこでは現在でも地域の伝統芸能が伝承され続けているなど、地域に対する住民の思い入れは非常に強い。そして、そこへやはり地域の財産として、他では見られない野生動物を紹介することで、児童や教職員の野生動物への興味関心を引き出すことを実践している。そこではさらに、専門家の話を鵜呑みにするだけでなく、それを自分でも調査できるようにするため、種同定の方法として、さえずりの聴き分け方の指導も行っている。そしてそこからは、地域から姿を消したと思われていた種を児童が再発見するという成果も得られている。このように、博学連携の中で、両者が長所を補い合う形で、継続性のある取り組みが実現するようになってきている。