| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-098 (Poster presentation)
近年問題となっている地球温暖化を受け、森林を利用したCO2の削減活動が国際的に進められている。我が国においても、適切に整備(植林・間伐など)された森林によるCO2吸収量をCO2排出削減量に算入する森林吸収源対策が注目を集めている。
広島大学では2012年度に約60,000-tのCO2を排出していた。現在この排出量の削減を目指し、太陽光発電設備の導入等の対策を行っている。一方、東広島キャンパス内の森林(105.9 ha)を吸収源対策として利用すれば、さらなるCO2排出削減が期待できる。また、大学の特徴を活かして学生参加型の吸収源活動を行えば、整備に必要な人手のより効率的な確保や環境教育の実践に繋がる。本研究ではこれらの可能性を探るための基礎的研究として、①キャンパス内の森林の現存量とCO2吸収量の推定を行い、②整備活動への学生の参加可能性を学生を対象にしたアンケート調査により明らかにした。
研究対象の森林を既存の植物社会学的植生図を利用して5つの植生タイプに再区分し、その植生タイプ毎に5つの調査区を設置して毎木調査を行った。ここから相対成長式を用いて植生タイプ毎の現存量(t/ha)を推定した。さらその値に各植生タイプの占有面積を掛けることで調査地全体の現存量を推定した。また、調査対象林における樹木の肥大成長量からCO2吸収量を推定した。その結果、調査地全体の現存量は27,276.6-tと推定された。また、CO2吸収量は1510.1-t-CO2 /年と推定され、これは東広島キャンパスのCO2排出量の5.4 %に相当することがわかった。一方、アンケート調査より、約64 %の学生が週に約90分の活動に参加してもよいという結果が得られた。この結果から森林吸収源対策としての整備活動に必要な人手を学生で賄うことが可能であることがわかった。