| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-099 (Poster presentation)

ありんこ視点で考える身近な生物多様性 -アリ類を利用した市民向け環境評価ツールの開発-

岩西哲*(十日町市立里山科学館キョロロ),高田兼太(大阪市西淀川区)

生物多様性の危機が深刻化する今日、生物多様性についての市民の理解を深めることが必要とされている。アリ類は現存量が大きく多様な動植物と関係を持つこと、幅広い環境に生息し、様々な環境条件に種組成が敏感に反応することなどから、優れた環境指標動物であることが知られている。また、多くの人にとってなじみ深く、採集が容易であることから、身近な環境の生物多様性への理解を深めるための市民向けの環境教育教材として有効であると思われる。そこでアリ類を利用した市民向けの環境評価ツールの開発とその有効性の検証を目的として、里山科学館キョロロにおいて市民協働のアリ相調査を実施した。

まず、新潟県十日町市内の公園や神社などの緑地50地点において、子どもたちにも行える簡便な見付けどりによるアリ相調査を行った。この結果、5亜科24属44種のアリが採集され、地点あたりの採集種数は10.1種だった。また、NMDS法により採集されたアリの種構成に基づいて地点を序列化したところ、アリの種構成が各地点の景観や周辺環境と関連していることが明らかとなった。

次に、上記の採集方法を取り入れた市民協働のアリ相調査を実施し、参加者77名を対象とした事前事後アンケートなどから環境教育プログラムとしての有効性を検証した。その結果、年齢や性別を問わず大部分の参加者が活動を楽しめていたこと、参加者による事前の予想よりも多くの種類のアリが採集されていたこと、活動を通して調査地の生物多様性についての認識に変化が見られたことなどが明らかとなった。

これらの結果から、アリ相調査が身近な環境の生物多様性への市民の理解を深める上で有効な環境教育プログラムであることが示唆された。


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