| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-101 (Poster presentation)
演者は、第60回日本生態学会大会で、シラバス調査から明らかになった文系大学での生態学教育の実態について発表した。文系大学で開講されている生態学関連科目は、ほとんどが選択制の一般教養科目であった。その中で唯一必修科目として開講されていたのが、演者が担当している京都外国語大学の「環境問題概説」である。
「環境問題概説」は京都外国語大学国際教養学科1年生対象の半期完結の授業で、毎年70名前後の学生が受講している。国際教養学科が新設された2010年度から開講され、一期生が卒業する本年度を持って閉講となった。本発表では、4年間に渡って展開されてきた「環境問題概説」を振り返り、文系大学での生態学教育の方法論や授業デザインを考えてみたい。
2010年度は、国際生物多様性年でもあり、生物多様性問題を授業の主要テーマとした。各回の授業では、まず講義をし、その後講義内容と関わりのある質問を出して、グループ議論をさせるという方法を取った。しかし、学生たちの満足度、理解度はともに低く、授業内容の抜本的改善が必要であると考えられた。
2011年度からは、自主的な活動には熱心に取り組むという学生の特性を鑑み、授業にフィールドワークを取り入れた。最初の5回の授業では、演者自身による生物多様性問題の講義に加えて、ほかの環境問題に関しては専門家を招いて講義をしてもらった。その後の授業では、学生に最も興味をもった環境問題を選ばせてグループを組ませ、その問題と関連のあるフィールド調査を義務づけ、発表をさせた。演者は教員というよりは、フィールド調査先を紹介したり、引率したりというコーディネーターに徹した。その結果、学生の多くは、環境問題を生活、経済、産業との関わりからとらえるという視点を得ることができた。
来年度から始まる新カリキュラムでは、学科横断型で「生活・環境コース」が設置される。今後もアウェイでの生態学普及に努めたい。