| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-102 (Poster presentation)

行政・市民・研究者の協働による地域の森づくり

洲崎燈子(豊田市矢作川研究所)

豊田市矢作川研究所は自生種を生かした公共空間の緑化や緑地管理についての提案を行っている。豊田市浄水地区に新設予定の小学校(仮称・第2浄水小学校)が矢作川の2次支川伊保川右岸の樹林を伐採して造成されるため、残地林の整備と活用、自生種による造成部分の緑地回復を提案した。

残地林のコンセプトを「学びと遊びと癒しの場」とし、現在豊田の市街地に残存している林の樹種組成も参考にして、かつての里山をイメージした落葉広葉樹主体の、若く明るく生き物が豊かな林にしていくことを提案した。具体的な森づくりの手順を決めていくため、地域の親子100人以上の参加により残地林の林分調査を実施した。20×60㎡の調査枠内で、樹高1.3m以上の493本の樹木の樹種と胸高直径を記録し、樹種と幹直径の異なる35本の樹木を選んで樹高測定を行った。

調査枠内ではヒノキが本数の20%、胸高断面積比の60%と最も多くを占め、次いでツブラジイが本数の16%、胸高断面積比の27%を占めていた。ヒノキや極相種であるツブラジイが多いのは鎮守の森に隣接しているためと考えられ、目標とする落葉広葉樹林へ移行させるのには時間がかかると考えられた。幹直径と樹高の相関式を用いて幹直径からすべての樹木の高さを計算したところ、ヒノキのほとんどは樹高10~22mで、ツブラジイは高木から低木までサイズがそろっており、コナラの樹高は12~22m、その他の落葉樹の樹高は12m未満であることが分かった。樹高2m未満の常緑低木が多く、全体の2割近くを占めていた。また、ヒノキの立ち枯れ木が大量にあった。こうした結果に基づき、まずヒノキの立ち枯れ木や簡単に伐れる常緑低木の伐採から始めて林内を明るくし、落葉広葉樹や草本類が育つ環境を徐々に作っていくことを提案した。現在、地域住民が主体となった森づくりが始まっている。


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