| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-108 (Poster presentation)
陸上生態系のバイオマスや炭素固定能を明らかにする手法として,画像解析やリモートセンシングによるフェノロジー観測に基づく研究が進展しつつある.森林においては,全天画像解析によるLAI推定に加え,近年は生態観測タワー(櫓)から見下ろした葉群画像に基づく研究も進んでいる.本研究では,ススキ草原のフェノロジー変化を長期的に捉えることを目的として,2005年から葉群動態をモニタリングしてきた.調査対象は,筑波大学菅平高原実験センター(長野県上田市)の半自然ススキ草原であり,この草原は毎年10月中旬の草刈りによって維持されてきた(刈り取られた地上部は持ち出し).この地域では例年,冬期には約1 mの積雪があり,3月中旬から下旬に雪融けが始まり,その後1カ月以内に草原の雪はほぼ融け終わる.生育期間中に自動撮像型魚眼デジタルカメラ(ADFC,http://pen.agbi.tsukuba.ac.jp) 1台を草原地表付近に設置して葉群の全天画像を毎日撮影し,解析に適した曇天時などの画像から,開空率に基づいてLAIを算出した.また,ADFC 1台を地上3m高の櫓に設置し,上方から見下ろした草原画像を同様に撮影した.全天画像によるLAI動態から,本草原では5月下旬または6月上旬以降に葉群が成長し,7月下旬〜8月上旬に葉群(LAI)が最大となり,それ以降は葉の萎凋・褐変に伴い葉群は衰退する傾向がある.この傾向には年々変動が有り,2010〜2012年にかけてはとくに,葉群の成長開始期・最大期・衰退期が早まり,LAIの最大値が高い傾向が認められた.全天画像は,葉群がうっ閉するほど撮像範囲が限られ,カメラ周辺の植物個体による影響を受けやすい.より広範囲を撮像する櫓上のカメラからの画像と比較し,上記の葉群成長開始とLAI最大値の年々変動について検討する.