| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-109 (Poster presentation)

日光七本桜テフラ(14000-15000年前)上に発達した累積性黒ボク土にみるイオウの形態

谷川東子(森林総研関西),橋本洋平(東京農工大),山口紀子(農業環境研),伊藤嘉昭(京都大化研),福島整(物質材料研),神田一浩(兵庫県立大),上村雅治,長谷川孝行(シンクロトロンアナリシスLLC),高橋正通(森林総研),吉永秀一郎(森林総研関西)

黒ボク土に相当する Melanudandsは、世界で最も黒い土のひとつとされ、遊離酸化物や有機炭素を多く含むことで知られる土壌である。発表者らはMelanundandsにはイオウ(S)化合物が多量に蓄積され、その主要な形態は酸化型有機Sであることを明らかにしてきた。また室内実験により表層土の有機物分解を促し、酸化型有機Sは還元型有機態Sが分解作用を受けて生成した産物であり、遊離酸化物、とくにアルミニウム酸化物によって保持され硫酸イオンまで分解しない可能性を示した。しかし、土壌断面プロファイルにみるイオウの保持形態の変動が、火山灰土が火山灰の2次堆積や大陸からの風成塵が継続的に累積したことにより上方に向かって発達する累積性土壌であることを反映しているのかどうか、という点は検討してこなかった。そこで土の累積性が吉永によって確認されている日光七本桜テフラ(Nt-S, 14,000-15,000年前形成)の上部に発達したMelanudandsについて、各種イオウの垂直分布をS K-edge XANES spectroscopyと湿式分析を組み合わせることで解析した。また全Sの安定同位体比を測定した。その結果、還元型S、中間型Sが比較的多い層が酸化型Sを多く含む層の間に縞模様に観察され、下層ほどS安定同位体比が低いことを確認した。従って、上方への土壌母材の堆積とデトリタスや土壌有機物の分解作用が同時に起こることで縞模様が形成され、分解過程で生成した酸化型有機Sの一部は無機の硫酸イオンまでは分解されずに保存されていると考えられる。


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