| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-111 (Poster presentation)
同位体の天然存在比の分析が、生態学分野全般に普及した結果、これまで化学分析などをおこなった経験の少ない研究者が同位体分析をおこなう機会が増大している。一方で、IAEAがδ13C値の補正法について指針を示したのは2006年であり、同位体の測定結果 (δ 値) を、どのように補正・報告するべきかについては、現時点においてもすべての研究者が合意しているとは言えない。そこで本研究では、将来的に標準的な補正方法となると考えられる、較正直線を用いた補正について整理し、補正法の違いが測定結果に及ぼす影響について検討する。
補正とは、δ 値が既知(以下、真値と呼ぶ)の標準物質の測定をもとに、真値と読み値 (補正されていない、質量分析計が出力したδ 値) の関係式を用いて、未知試料の読み値から、補正された測定値を求めることを指す。特に、複数の標準物質を測定し、説明変数に読み値、従属変数に真値を取って2変数が直線関係にあるという前提のもとで補正をおこなう場合、補正に用いる回帰線を較正直線と呼ぶ。本発表では、京都大学生態学研究センターで使用している標準物質を用いて較正をおこなった場合を想定し、標準物質の読み値の分布から標本抽出をおこなう ”モンテカルロシミュレーション” から、測定値についての精度 (precision) を算出した。シミュレーション結果から、補正法の違いが測定結果に及ぼす影響を解析し、同位体分析に関わる下記の問いについて検討した。
1) 使用する標準物質の選定指針と種類数
2) 標準物質の反復測定数と値の推定精度の関係
3) 補正方法による推定精度の変化
4) 分析の精度および補正方法の表記
検討の結果、較正直線による補正をおこない、δ 値の測定レンジよりも広い範囲から、3種類程度のスタンダードを分析することが、努力量に対して効率がよいと考えられた。