| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-114 (Poster presentation)

衛星-生理生態学による森林生態系機能の時空間スケーリングの試み

*村岡裕由(岐阜大),永井信(JAMSTEC),斎藤琢(岐阜大),野田響(国環研),奈佐原顕郎(筑波大),伊藤昭彦(国環研),三枝信子(国環研),小泉博(早稲田大)

植物の生理生態学的な環境応答は,個体スケールでの生態学的挙動の理解から地球スケールでの陸上生態系機能の動態や気候変動への応答にいたるまで,広範な時空間スケールでの生態系現象の根幹を成す。たとえば陸上植生の葉群フェノロジーは,微気象環境や資源量が季節的に変化する状況での個葉・個体の光合成生産性に関する生態学的反応としても見ることができるし,炭素吸収・放出などの陸域生態系機能の時間的変動の生態学的メカニズムとして見ることもできる。

植物を直接調べる生理生態学的研究が多様な生態系現象の解明に寄与するとともに,衛星やデジタルカメラなどを利用したリモートセンシングはスケール縦断的な生態系研究の推進力となっている。特に自動化された定点・定期観測は,植物個体から景観に至る広範な空間スケールでの葉群フェノロジーの把握や年変動の検出を可能にしている。

我々は岐阜県高山市の「高山サイト」において,森林生態系の炭素動態の生理生態学とモデルやリモートセンシングによる時空間スケーリングを融合させて「衛星(生理)生態学」として展開してきた。例えば林冠タワー上での葉群生理生態データとモデルによる林冠光合成速度の季節性と年変動の生理生態学的解明,カメラや分光放射計による林冠光合成能力のリモートセンシング手法の開発と衛星データへの適用などが挙げられる。約10年にわたる林冠研究を通じて,葉の生理・形態・分光特性の相互関係,およびそれらの季節性や環境応答の総合的な分析,温暖化が葉群にもたらす影響を予測するための野外温暖化実験などの融合研究が,森林生態系機能の変動の解明・予測に有効であることが示されてきた。


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