| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-117 (Poster presentation)

東アジアの陸域生態系における炭素分配-タワーフラックス・生態プロセス観測の統合解析-

斎藤琢,Noh NamJin(岐阜大・流域圏),永井信(JAMSTEC),Son Yowhan,村岡裕由(岐阜大・流域圏)

急速な気候変動が顕在化した現在において、大気圏-生物圏相互作用系の根幹を成す炭素循環および収支の時空間変動の高精度な評価が求められている。陸域生態系の炭素収支は、光合成を介した植物体や土壌への炭素蓄積、植物体呼吸・微生物分解呼吸による大気への放出といった炭素分配過程によって特徴付けられる。炭素分配の各過程における炭素滞留時間は日から数百年と時間的に広範であり、炭素滞留時間を考慮した陸域生態系炭素収支の時空間変動の高精度評価を実施するためには、様々な生態系における炭素分配の特徴やその地理的変異を解明することが重要となる。陸域生態系炭素分配を推定する代表的な手法としてタワーフラックス観測と生態プロセス観測が挙げられる。近年、既存文献から得られるこれらの観測情報を統合し、陸域生態系の炭素分配の理解を深める試みがなされているが、東アジアにおける情報の統合とその解析は未だ不十分である。そこで、本研究では、東アジア地域の寒帯から熱帯まで幅広い気候帯で得られた炭素分配に関する知見を集約し、メタデータ統合解析を実施した。その結果、(1)総一次生産量(GPP)の値は、最小で2.3 MgC ha-1 yr-1、最大で30 MgC ha-1 yr-1に達する、(2)生態系呼吸量、植物体呼吸量、微生物呼吸量はGPPに対して線形的に増加する、(3)炭素利用効率(GPPに対する純一次生産量の比)はGPPの増加とともに減少する傾向があることが明らかとなった。このような炭素分配に関する知見の集約は、陸域生態系モデルやリモートセンシングを利用した地域スケールの炭素収支を推定する際に、その検証データとして高い利用価値があると考えられる。


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