| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-123 (Poster presentation)

御岳山の土石流跡地に天然更新したハンノキ属樹種の葉の窒素安定同位体比の変動

*飛田博順(森林総研),九町健一(鹿児島大・理工),柴田銃江(森林総研・東北),壁谷大介(森林総研),矢崎健一(森林総研),北尾光俊(森林総研)

木曽御嶽山の泥流跡地において、窒素安定同位体比を用いた手法により、ハンノキ属樹種の窒素吸収量に対する窒素固定量の寄与率を明らかにすることを目的とした。木曽御嶽山において1984年に発生した泥流跡地の固定調査プロット(1985年に設定)の中で、標高2000 mの高標高区と標高1100 mの低標高区を調査地とした。高標高区では、撹乱時に表土が残った場所(高標高区)と表土が残らなかった場所(高標高−表土なし区)の2カ所を対象とした。対象調査地では、泥流発生後の25年間の植生回復と土壌の性質の変化について報告されている。各調査区で、ハンノキ属樹種と窒素固定能を持たない樹種(コントロール樹種)が同所的に生育している場所を数地点選定した。8月に、各地点で、ハンノキ属樹種とコントロール樹種の樹冠葉を採取し、乾燥・粉砕後、窒素安定同位体比を測定した(質量分析器、MAT252)。各調査区の葉の窒素安定同位体比は、ハンノキ属樹種とコントロール樹種の間で、明瞭な差が見られた。窒素吸収量に対する窒素固定の寄与率は、低標高区(ケヤマハンノキ)では、高標高区(ミヤマハンノキとヤハズハンノキ)に比べて低い傾向を示した。高標高区内では、ミヤマハンノキとヤハズハンノキの樹種間で、窒素吸収量に対する窒素固定の寄与率に明瞭な差が見られなかった。植生回復に伴う土壌形成の進行により窒素固定の寄与率が変化することが示唆された。


日本生態学会