| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-124 (Poster presentation)

九州大学福岡演習林におけるスギ人工林の二次林化が物質循環に及ぼす影響

榎木勉(九州大・演習林)

福岡県久山町に位置する九州大学福岡演習林の約140年生のスギ人工林と、この造林が不成績に終わり天然更新した広葉樹が優占する二次林において、地上部一次生産量(ANPP)とリターフォールによる窒素還元量を比較し、スギ人工林の二次林化が物質循環に及ぼす影響を検討した。両林地に30×60mのプロットを設置し10×10mのセル単位で毎木調査とリターフォール量およびリターフォール中の窒素濃度の測定を行った。

人工林と二次林の地上部現存量に有意な差はなかった。人工林には強度の間伐が施され、立木密度が194本/ha低く、地上部現存量のプロット内でのばらつきが大きかった。人工林のリターフォール量は二次林よりも多かった。人工林では、立木密度が低く、枝条が大きく広がっていることが原因の一つと考えられた。地上部現存量の変化はプロット間では有意な差はなかった。二次林内では調査期間中に死亡した個体が散在しており、現存量の変化量のプロット内のばらつきが大きくなった。二次林では所々に生じた土砂崩れや冠雪による幹折れなどの撹乱が主要な死亡要因であった。単位バイオマスあたりの成長量、リターフォール量はプロット間での違いはなかった。

リターフォール中の窒素濃度はプロット間で有意な差はなかったが、二次林内でのばらつきが大きかった。二次林では主に地形に対応して種が分布しているため、種による窒素利用特性の違いが影響したと考えられた。スギのリターフォールだけを比較すると、二次林の窒素濃度が低くかった。原因としては、二次林の土壌の貧栄養や広葉樹との窒素獲得競争などが考えられた。しかし、成長量、生産量やリターフォールによる窒素還元量にプロット間で差がないことから土壌の貧栄養造林が不成績に終わった原因ではないと考えられた。


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