| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-125 (Poster presentation)

北極圏土壌中の有機炭素・熱・水の相互作用をシミュレーションする:温暖化予測への示唆

*伊勢武史(兵庫県立大・シミュ), 森健介(Univ. of Calgary, Dept. Geomatics Engineering), 荒木田葉月(理研・計算科学)

北極域の地表面近くには大量の土壌有機炭素(SOC)が蓄積されている。気候変動による土壌の温度上昇や乾燥化によりSOCの分解が進むことで二酸化炭素が生じ、気候変動を加速される正のフィードバックが懸念されている。よって、気候変動予測の高精度化に貢献するため、環境要因の変化にともなうSOCの挙動を的確に再現するシミュレーションモデルの開発が急務である。本研究では、SOCの蓄積・分解による土壌の厚さと質の変化をダイナミックに再現するモデルを用いた解析から得られた知見をまとめる。

Raised bog(高位泥炭地)と呼ばれる有機質土壌によって形成される湿地の特徴は、地下水位が周辺の土壌よりも高いことである。これは蓄積された泥炭の物理特性とローカルな水循環のフィードバックによる。すなわち、保水力が高く水はけのわるい泥炭が蓄積することで地下水位が上昇し、それが土壌を嫌気的状態に保ち微生物による泥炭の分解を妨げる。これによりさらなる泥炭の蓄積と地下水位の上昇が生じるという正のフィードバックである。本研究では、泥炭地の水はけを実験的に上昇させることで気候変動下で生じうる環境変化を再現し、泥炭層内のフィードバックによって引き起こされるregime shiftの存在が確かめられた。


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