| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-127 (Poster presentation)
土壌における有機物の分解および蓄積は生態系の炭素および栄養塩循環を駆動する重要なプロセスである。微生物による有機物の分解活性は第一に気候因子に依存するが、酸性条件における分解抑制など土壌環境要因によっても強く影響を受ける。我が国の森林には酸性土壌が広く分布するが、火山灰の混入程度によっても酸性化の進行程度は大きく異なる。本研究では植物の代表成分であるセルロースを微生物の分解活性の指標として、酸性度の異なる土壌環境における有機物分解速度の変動要因を解析した。
岩手県安比高原(AP)および盛岡市(MR)、新潟県苗場山(NB)、京都府丹後半島(TG)のブナ林4地点においてセルロースろ紙を表層土壌(鉱質土壌0-5 cm)に埋設し、重量減少から分解速度を測定した。セルロース分解速度に対する環境要因の影響を解明するため、土壌温度・水分の観測、土壌pH、土壌炭素・窒素含量の測定を行った。
土壌炭素含量は8%~16%の幅をとり、いずれのサイトにおいても高かった。土壌pHは4.0~5.0と異なり、火山灰混入程度の最も大きいMRで5.0と比較的高く、TGで最も低かった。1年間のセルロースろ紙の減少割合はMRで93%、他の3サイト(AP、NB、TG)では約50%であった。我が国のブナ林では土壌酸性化の進行に伴い微生物のセルロース分解活性が低下することが示された。この要因として、セルロース分解酵素(セルラーゼ)活性が低pHで抑制されること、酸性条件で微生物バイオマスが低下することが考えられた。一方、火山灰土壌では微生物の分解活性が高いにもかかわらず炭素蓄積量が高かったことから、高分子化合物の低分子化(例えばセルロース分解)の抑制よりも無機化-吸着反応が炭素蓄積を制御している可能性がある。