| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-128 (Poster presentation)

森林環境における昆虫群集への放射性Cs移行

*石井弓美子・高村典子(国立環境研究所・生物生態系環境研究センター)・林誠二(国立環境研究所・地域環境研究センター)

福島第一原発事故由来の放射性核種は長期間森林内に残留し、食物連鎖を通じて動物食物網に移行する。森林環境で生活する野生生物は、土壌からの外部被ばくと食物網を通じた内部被ばくの影響を長期的に受けると考えられ、放射性セシウムの食物網への移行とその影響を検討することは重要な課題である。本研究では、森林環境において土壌・植物から昆虫群集への放射性セシウムの移行を食性に注目して明らかにし、その被ばく線量を推定することを目的とした。

2012年と2013年に、低濃度汚染地域として茨城県筑波山、高濃度汚染地域として福島県宇多川の2箇所の調査地で、植物・昆虫・菌類などを採集し放射性セシウム濃度を測定した。その結果、昆虫に含まれる放射性セシウムについては、オサムシなど肉食性の昆虫でチョウ目やカメムシ目など食植性の昆虫より放射性セシウム濃度が高い傾向があった。また、森林内で放射性セシウムを高濃度に蓄積している地衣類や腐食木材を餌とする昆虫などでは放射性セシウム濃度が高く、放射性セシウムの移行は食性によって異なることが示唆された。さらに、本調査地における各生物の生活史を考慮し、生物相の線量評価モデルによって被ばく線量を推定した結果、土壌内昆虫などの外部被ばく量が高くなると考えられた。これらの結果から、調査地における放射性セシウム被ばくによる野生生物影響について考察を行う。


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