| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-130 (Poster presentation)
陸上最大の炭素プールである土壌有機物(SOM)は、様々な滞留時間を示す有機物の混合物であり、その動態予測が困難であることが地球炭素循環(温暖化応答予測)に大きな不確定性をもたらしている。SOMが土壌中に長期間蓄積される要因として、無機物との相互作用(化学的収着、物理的隔離等)の寄与が明らかにされている。SOMを有機無機集合体として評価するために物理分画手法が有効な手法であり、粒径サイズ別に分画した有機無機集合体は、階層性をもつ高次構造を形成することが様々な土壌タイプで認められている。主要な鉱物組成に応じた階層性の違いが報告されているが、その構成要素である有機無機集合体の有機物保持量、炭素の滞留時間の違いは明らかでない。本研究では、温帯、熱帯地域から採取した鉱物組成が異なる4つの土壌について粒径サイズ別分画を行い、ⅰ)有機無機集合体の種類、ⅱ)放射性炭素同位体測定による現代炭素混入量(pMC)、ⅲ)窒素安定同位体比(δ15N)のサイズ別分布を比較し、SOM安定化メカニズムと有機無機相互作用について考察した。いずれの土壌タイプでも、<2μm画分で最も高い有機炭素、全窒素濃度を示し(45~73%)、粒径サイズが小さい画分ほど、C/N比は低く、pMC、δ15N値は上昇する傾向を示した。以上の結果から、鉱物組成が異なる土壌タイプに共通して、粒径サイズが小さい画分ほど、有機物含量が高く、微生物変性を受けた比較的新しい有機物の影響を受けていることが示唆された。この結果は、粘土含量がSOMの平均滞留時間を規定するという、既存の生態系モデルで用いられてきた仮定を揺るがしうる新知見であり、SOM安定化機構の詳細なメカニズムを追っている。