| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-132 (Poster presentation)

熱帯域の土地利用における温室効果ガスフラックスのメタ解析

*安立美奈子,伊藤昭彦(国環研)

人為的な炭素排出のうち約2割は土地利用変化によるものと言われ、特に熱帯林の森林減少や劣化防止によるCO2排出削減効果 (REDD+)の評価が急務の課題となっている。温室効果ガスであるメタンと亜酸化窒素の主な放出源は農耕地であり、人間活動による排出量に占める農耕地起源の割合は、メタンは52%、亜酸化窒素は84%と見積もられている。本研究では、世界の3つの熱帯域(南米、アフリカ、アジア)のさまざまな土地利用から放出されたメタンと亜酸化窒素の放出速度について、論文等の文献値を集めてメタ解析を行った。

その結果、メタンについては南米が8生態系、アフリカは5生態系、アジアでは11生態系でのデータが得られ、亜酸化窒素については、南米で7生態系、アフリカは5生態系、アジアでは8生態系のデータが得られた。しかしながら、各土地利用で得られた文献の総数や調査期間の違い、データの外れ値などの問題があるために明確な比較は困難であった。得られた傾向としては、南米では天然林がメタンの吸収源である一方で二次林が放出源、草地と耕作地はメタンを吸収していた。アフリカのデータは非常に少なく、耕作地がメタンの放出源であった。アジアは他の地域に比べて多様な土地利用のデータがあり、天然林と植林地がメタンの吸収源、水田がメタンの放出源であった。また、亜酸化窒素については、ほとんどの土地利用で放出源となっているが、メタン南米では二次林が農耕地よりも高い値であり、草地ではわずかに吸収していた。アフリカの農耕地とアジアの泥炭地は亜酸化窒素の放出源であり、特にアフリカの農耕地における亜酸化窒素のフラックス量は世界的にも大きい値であることが示された。


日本生態学会